みなさま、こんばんは。 6/22 − 6/23 千葉県三芳村と岬町をまわって参りました。二日間に わたり見たり聞いたりした話を書いてみたいと思います。今回の旅の目 的は「いかに田舎暮らし(農的暮らし)へ移行するか」で、そのために 必要な準備や心構え、ヒントを得ようと二組のご夫婦に連絡をとり、い ろいろと興味深いお話をお伺いすることができました。 <三芳村> 三芳村は千葉県の南端、館山のすぐ北にあります。94年11月に東 京から移住された瀧野ご夫妻に会うことができました。(二年前にML のOFF会で奥様にはお会いしたことがあります) <体調を崩してしまった> 900坪の畑を借りて、野菜を30種くらい作ったそうです。しかし 酸性土壌のため、陸稲や雑穀、ほうれん草、ピーマンなどはできなかっ た。(麦や大豆はできた)ともかく、できた野菜を毎日いっぱい食べた。 けど、だんだん体調はわるくなり、体は重く冷えた。村の健康診断でも 肝臓に異常あり、と。奥様はお酒は控えめ、ご主人はお酒、タバコはな しなのになぜ? <分析> 三芳村では畜産が盛んで、借りた土地では、未処理の牛糞を大量に投 入し、飼料用の青草(イタリアンライグラス)を育てていた。− だか ら窒素分過多の土壌になった。− そこでできた野菜を食べる。− 肝 臓に負担がかかる、という構図が浮かび上がってきた。夫婦そろって体 調を崩したあと、野菜を買うようにした。すると体調は元通りに回復し ていった。教訓は「野菜をつくる前に土壌の質に氣をつけるべし。」い くら身土不二とは言っても、土壌によっては危険な野菜ができる可能性 もある、ということ。 (当初、畑があきらかに窒素分過多であることに気づいたものの、亜硝 酸塩の問題についてよく知らなかった。今にして思えば、葉野菜などに 亜硝酸塩が多く含まれていたのかもしれない。そのため一時的に肝臓に 負荷がかかったという可能性は排除できないと考えている) <田舎もこわい> 一見きれいな田舎でも、棚田の上に産業廃棄物の不法投棄やクルマの 廃車の山があることも珍しくない。そんなものがあれば当然地下水は汚 れ、安全でおいしい野菜の収穫は期待できない。また、借りた畑の中に 古い農機や農薬の入った容器などが埋まっていることもある。 前述の900坪の畑は今年から地主さんの都合で借りられなくなった。 しかしそれでよかったのでしょう。今度は窒素分過多でない畑を借りら れることを願っています。 <職業> ご主人は「もの書き」 いままで携わった作品。 「学歴だけが人生じゃない」中卒社長の会 ハート出版 「松本サリン事件」河野義行著 近代文芸社 (冤罪の恐ろしさを克明 に綴った本) また「もの書き」以外にも遺跡発掘のバイトをされている。このご主 人はとにかく多才。飲めないのにワインもビールもつくる。炭焼きもす る。PCにも詳しい。LAN TIMES に記事を書いていたほど。アンプは真 空管で、当然レコード。 奥様もきっちり稼いでいる。英訳・和訳の仕事。たいへんだけど頑張 っておられる。奥様も味噌をつくったり梅干をつくったり、かなりの腕 前。 田舎暮らしと言っても、自給自足はふつう無理だから現金収入がいる。 瀧野さんご夫妻のように多才であればいいけれど、特に人様に披露でき るような特技がこれといってない人には「田舎暮らし」は遠いのかもし れない。 <感想> 農的暮らしのマイナス面やこわさをお聞きできたのは収穫でした。上 記のように苦労はされているものの、会って話してみるととても元氣そ うでなによりでした。 昼食は5人で「百姓屋敷じろえむ」でとりました。写真のように古い 茅葺の門があり、その奥に手入れの行き届いた古民家があります。心が 安らぐ場所で、一度訪ねてみる価値はあると思います。料理は野菜と卵 料理、鶏肉を使ったソーセージまであり、どれもとてもおいしかった。 「百姓屋敷じろえむ」 三芳村山名2011 tel.0470-36-3672 一人 1500円(昼食のみ) 予約制です。 25年前から有機農業と養鶏(平飼い有精卵)を実践する「稲葉ファ ーム」が家族で運営しています。野菜・漬物・卵・鶏肉はすべて自家製 です。 * <岬町> 翌日は知人の紹介で、中滝寺の牧山ご夫妻を訪ねました。ご主人は昔、 高校の先生をされていて、現在はお坊さん。奥様は現在でも週末に地元 の小学生(大人も含む)に習字を教えていらっしゃいます。 <電気、ガス、水道、電話> 田舎暮らしへの思いを話している間、牧山先生はニコニコしながら相 槌をうってくださいました。わたくしからの話が一段落すると、いくつ かの意見をくださいました。田舎でも当然、電気、ガス、水道、電話、 食費、クルマの維持費、は必要なので、ある程度の収入は必要。また田 舎では、ほとんど仕事がないので、可能であれば長距離通勤をするのが いいでしょう、とのこと。 <千葉県の位置> 千葉県というのは「袋小路」のような場所で、ヒト、モノ、カネの通 り道になっていない。それが理由で未だに保守的なんだと思う。しかし 保守的ゆえの良さもあると思う、とのこと。 <甘える> 田舎へ引っ越したら、最初が肝心。低姿勢で隣近所にも挨拶をしに行 く。なにもわかりませんが、どうかよろしくお願い致します、という姿 勢を崩さない。言葉はわるいが、周囲の人々に上手に甘えることが大事。 誰でも甘えられればうれしいもの。 <物件探し> 1.物件は三時頃、見に行くとよい。西日が射し、一番条件がわるい ときに物件を見ること。朝日、夕日は美しいので、そういうときにはな るべく見ない方がよい。 2.即決はしないこと。どんなにいい物件で も時間をおいてから決める。 3.買いたいとか借りたいとか、なるべ く言わないこと。不動産屋には、もしいい物件があれば考えたいという 言い方をすること。 4.いきなりいい物件は探せないと思うので、買 うのではなく借りることを考えた方がいいでしょう。しばらく住んでみ て、地元とも交流を重ね、さらにいい物件を探すというように、二段階 にわけて考えるといいと思う。 <トイレ考> 電気はある。ガスはプロパンガス。(ところによって天然ガス)水道 もきている。(ところによって井戸)電話もある。しかし、トイレはど うするのか。水洗トイレが使えるとは限らない。汲み取りでもいいか。 もしくは微生物を利用した浄化槽をとりつけるのか。人間は排泄しなく てはならないのだから、それをよく考えてみるべき。 <子供の教育> 小学校は割と近いほうがよい。田舎では学校を選べない。都会のよい ところは学校を選べるという点。公立でもある程度選べるし、私立とい う手もある。 <自然> 子供に自然は一番。ザリガニ、ドジョウ、クワガタもいる。田舎は空 気と水がよい。大人も菜園をやるのは本当に楽しい。ただし、最初は田 んぼよりも畑(野菜)の方がやりやすいでしょう。 <都会と田舎> 田舎にはきれいな空気と水があるだけで、その他の点では都会の方が 住みやすいでしょう。有機野菜さえ、いいものは都会の方が入手しやす い。都会と田舎は、それぞれにいい面、わるい面があるので、よく考え て、それでも田舎に来たければ、まだ若いし、子連れだからきっと歓迎 されるでしょう、とのことでした。 いやいや、二日間、随分と勉強になりました。都会の良さもあらため てわかりました。よく考えてみます。お世話になった方々、どうもあり がとうございました。