<千葉県三芳村と岬町>

last update 27.June.2002

 みなさま、こんばんは。

 6/22 − 6/23  千葉県三芳村と岬町をまわって参りました。二日間に
わたり見たり聞いたりした話を書いてみたいと思います。今回の旅の目
的は「いかに田舎暮らし(農的暮らし)へ移行するか」で、そのために
必要な準備や心構え、ヒントを得ようと二組のご夫婦に連絡をとり、い
ろいろと興味深いお話をお伺いすることができました。

<三芳村>

 三芳村は千葉県の南端、館山のすぐ北にあります。94年11月に東
京から移住された瀧野ご夫妻に会うことができました。(二年前にML
のOFF会で奥様にはお会いしたことがあります)

<体調を崩してしまった>

 900坪の畑を借りて、野菜を30種くらい作ったそうです。しかし
酸性土壌のため、陸稲や雑穀、ほうれん草、ピーマンなどはできなかっ
た。(麦や大豆はできた)ともかく、できた野菜を毎日いっぱい食べた。
けど、だんだん体調はわるくなり、体は重く冷えた。村の健康診断でも
肝臓に異常あり、と。奥様はお酒は控えめ、ご主人はお酒、タバコはな
しなのになぜ?

<分析>

 三芳村では畜産が盛んで、借りた土地では、未処理の牛糞を大量に投
入し、飼料用の青草(イタリアンライグラス)を育てていた。− だか
ら窒素分過多の土壌になった。− そこでできた野菜を食べる。− 肝
臓に負担がかかる、という構図が浮かび上がってきた。夫婦そろって体
調を崩したあと、野菜を買うようにした。すると体調は元通りに回復し
ていった。教訓は「野菜をつくる前に土壌の質に氣をつけるべし。」い
くら身土不二とは言っても、土壌によっては危険な野菜ができる可能性
もある、ということ。

(当初、畑があきらかに窒素分過多であることに気づいたものの、亜硝
酸塩の問題についてよく知らなかった。今にして思えば、葉野菜などに
亜硝酸塩が多く含まれていたのかもしれない。そのため一時的に肝臓に
負荷がかかったという可能性は排除できないと考えている)

<田舎もこわい>

 一見きれいな田舎でも、棚田の上に産業廃棄物の不法投棄やクルマの
廃車の山があることも珍しくない。そんなものがあれば当然地下水は汚
れ、安全でおいしい野菜の収穫は期待できない。また、借りた畑の中に
古い農機や農薬の入った容器などが埋まっていることもある。

 前述の900坪の畑は今年から地主さんの都合で借りられなくなった。
しかしそれでよかったのでしょう。今度は窒素分過多でない畑を借りら
れることを願っています。

<職業>

 ご主人は「もの書き」  いままで携わった作品。
「学歴だけが人生じゃない」中卒社長の会  ハート出版
「松本サリン事件」河野義行著 近代文芸社 (冤罪の恐ろしさを克明
に綴った本) 
 また「もの書き」以外にも遺跡発掘のバイトをされている。このご主
人はとにかく多才。飲めないのにワインもビールもつくる。炭焼きもす
る。PCにも詳しい。LAN TIMES に記事を書いていたほど。アンプは真
空管で、当然レコード。

 奥様もきっちり稼いでいる。英訳・和訳の仕事。たいへんだけど頑張
っておられる。奥様も味噌をつくったり梅干をつくったり、かなりの腕
前。

 田舎暮らしと言っても、自給自足はふつう無理だから現金収入がいる。
瀧野さんご夫妻のように多才であればいいけれど、特に人様に披露でき
るような特技がこれといってない人には「田舎暮らし」は遠いのかもし
れない。

<感想>

 農的暮らしのマイナス面やこわさをお聞きできたのは収穫でした。上
記のように苦労はされているものの、会って話してみるととても元氣そ
うでなによりでした。

  昼食は5人で「百姓屋敷じろえむ」でとりました。写真のように古い
茅葺の門があり、その奥に手入れの行き届いた古民家があります。心が
安らぐ場所で、一度訪ねてみる価値はあると思います。料理は野菜と卵
料理、鶏肉を使ったソーセージまであり、どれもとてもおいしかった。

「百姓屋敷じろえむ」 三芳村山名2011  tel.0470-36-3672
  一人 1500円(昼食のみ) 予約制です。
  25年前から有機農業と養鶏(平飼い有精卵)を実践する「稲葉ファ
ーム」が家族で運営しています。野菜・漬物・卵・鶏肉はすべて自家製
です。

*

<岬町>

 翌日は知人の紹介で、中滝寺の牧山ご夫妻を訪ねました。ご主人は昔、
高校の先生をされていて、現在はお坊さん。奥様は現在でも週末に地元
の小学生(大人も含む)に習字を教えていらっしゃいます。

<電気、ガス、水道、電話>

 田舎暮らしへの思いを話している間、牧山先生はニコニコしながら相
槌をうってくださいました。わたくしからの話が一段落すると、いくつ
かの意見をくださいました。田舎でも当然、電気、ガス、水道、電話、
食費、クルマの維持費、は必要なので、ある程度の収入は必要。また田
舎では、ほとんど仕事がないので、可能であれば長距離通勤をするのが
いいでしょう、とのこと。

<千葉県の位置>

 千葉県というのは「袋小路」のような場所で、ヒト、モノ、カネの通
り道になっていない。それが理由で未だに保守的なんだと思う。しかし
保守的ゆえの良さもあると思う、とのこと。

<甘える>

 田舎へ引っ越したら、最初が肝心。低姿勢で隣近所にも挨拶をしに行
く。なにもわかりませんが、どうかよろしくお願い致します、という姿
勢を崩さない。言葉はわるいが、周囲の人々に上手に甘えることが大事。
誰でも甘えられればうれしいもの。

<物件探し>

 1.物件は三時頃、見に行くとよい。西日が射し、一番条件がわるい
ときに物件を見ること。朝日、夕日は美しいので、そういうときにはな
るべく見ない方がよい。 2.即決はしないこと。どんなにいい物件で
も時間をおいてから決める。 3.買いたいとか借りたいとか、なるべ
く言わないこと。不動産屋には、もしいい物件があれば考えたいという
言い方をすること。 4.いきなりいい物件は探せないと思うので、買
うのではなく借りることを考えた方がいいでしょう。しばらく住んでみ
て、地元とも交流を重ね、さらにいい物件を探すというように、二段階
にわけて考えるといいと思う。

<トイレ考>

 電気はある。ガスはプロパンガス。(ところによって天然ガス)水道
もきている。(ところによって井戸)電話もある。しかし、トイレはど
うするのか。水洗トイレが使えるとは限らない。汲み取りでもいいか。
もしくは微生物を利用した浄化槽をとりつけるのか。人間は排泄しなく
てはならないのだから、それをよく考えてみるべき。

<子供の教育>

 小学校は割と近いほうがよい。田舎では学校を選べない。都会のよい
ところは学校を選べるという点。公立でもある程度選べるし、私立とい
う手もある。

<自然>

 子供に自然は一番。ザリガニ、ドジョウ、クワガタもいる。田舎は空
気と水がよい。大人も菜園をやるのは本当に楽しい。ただし、最初は田
んぼよりも畑(野菜)の方がやりやすいでしょう。

<都会と田舎>

 田舎にはきれいな空気と水があるだけで、その他の点では都会の方が
住みやすいでしょう。有機野菜さえ、いいものは都会の方が入手しやす
い。都会と田舎は、それぞれにいい面、わるい面があるので、よく考え
て、それでも田舎に来たければ、まだ若いし、子連れだからきっと歓迎
されるでしょう、とのことでした。

 いやいや、二日間、随分と勉強になりました。都会の良さもあらため
てわかりました。よく考えてみます。お世話になった方々、どうもあり
がとうございました。



「百姓屋敷じろえむ」  三芳村山名2011
inserted by FC2 system