(報告)5月17日(土)太陽電池のしくみと太陽電池の有効な活用方 法について 日 時:5月17日(土)13:30〜15:30 場 所:紀の川市北中216番(米市農園) テーマ:太陽電池 講 師:峰元 高志(立命館大学 理工学部電子光情報工学科 講師) 内 容:太陽電池のしくみと太陽電池の有効な活用方法について 峰元さんは、現在日産科学振興財団のプログラムで「野菜流通」につ いての研究もされています。講演後「野菜流通」に関する意見交換会も 行いました。 * <エネルギーのカタチ> 1765年 蒸気機関の発明以来、エネルギーは、 1.固体(石炭など)→ 2.液体(石油など)→ 3.気体(天然ガスなど)→ 4.電気 というようにカタチを変えてきました。 より遠くへより簡単にエネルギーを送れるようになったのです。 したがって、電気は「高級エネルギー」なのです。 * しかしいいことばかりではありませんでした。 量産できるようになり、 大量輸送できるようになり、 大量消費できるようになりましたが、 人口の思わぬ増加と 人類の際限の無い欲望のために エネルギー問題は大きくなる一方です。 深刻なエネルギー不足はもう間近に迫ってきています。 <可採年数> あと何年くらい石油や石炭は採れるのでしょう? 石油: 43年 天然ガス: 61年 石炭: 180年 ウラン235:73年 上記の数字は30年前から変化がありません。(^^; これは採掘技術が上がっているためです。 また新たな油田も見つかっているからです。 しかし石油などすべては有限資源ですのでやがてなくなります。 可採年数のデータは資源エネルギー庁からのデータです。 常に経済や利権が絡んでいるので、現存する大企業が生き残りやすい 数字(可採年数)に刷りかえられている可能性もあります。 <太陽電池とは> 結晶のシリコンです。 つまり太陽電池は半導体からできています。 p型シリコンとn型シリコン、pn接合という構造になっています。 太陽から届く「光エネルギー」を電気に変えることができます。 <太陽光発電の利点> 1.無尽蔵(あと数億年は大丈夫) 2.無排出(使用時にはCO2などを排出しないので) 3.無可動(動作する部分はないので) 4.無振動(無可動なので) 5.無騒音(無可動なので) 6.無人化(ヒトが管理する必要がないので) <設置事例> シースルータイプ(see through)の太陽電池の設置場所は下記の通り ・JR金沢駅東広場 ・兵庫県県庁舎 ・河内長野市清見台コミュニティセンター ・戸田ショッピングセンターなど、多数 <あまりよくない例> 実は、最初の写真がよくない例です。 ドイツでは太陽光発電自体が投機の対象になってしまっている。 ドイツの Feed-in-Tariff の制度でふつうの電気より高く国が買い上 げることになっているので。 本来は太陽電池の直流を直流のまま使うのがよい。 各家庭に太陽電池を設置すれば遠くへ送電する必要もなく、送電ロス もない。 <現在の主流の太陽電池> ・単結晶Si太陽電池 厚み:200ミクロン(0.2mm) 効率:17〜21% ・多結晶Si太陽電池(最も普及している) 厚み:200ミクロン 効率:15〜17% ・アモルファスSi太陽電池 厚み:0.5ミクロン 効率:10〜12% ・シリコンの太陽電池のシェアは92% <シリコンウェハの製造プロセス> ・珪砂(けいさ)SiO2 (ノルウェー産珪砂は不純物の金属が少ない) これをカーボン、アーク炉還元すると → 粗製シリコン になる これを塩酸と反応させると → トリクロロシラン になる これを蒸留・精製すると → 高純度トリクロロシラン になる これを水素還元すると(このとき電気を使用します) 高純度多結晶シリコン になる ・製造プロセスの中で出てくる副産物(バイプロダクト)はほぼ100 %、再利用されるので、環境汚染はそれほど心配ない。しかし中国の工 場・プラントでは、公害を河川へ垂れ流しているケースもある模様。 ・(電気を得るために)太陽電池製作プロセスで電気を使うわけだが、 その電気は3年程度で取り返せるとのこと。 <なぜ太陽光発電が普及しないの?> 1.太陽電池の価格(3kWシステム):200万円 2.電気代で取り返すのに約20年かかる。 (ちなみに−琉春庵−♪では60年以上かかりそう) 3.太陽電池の寿命:20年以上は使用できるようになった。 (原料不足) 4.なるべく半導体用Siの残り物を使用するようにしている。 5.太陽電池が世界中で売れている!のでSi(シリコン)不足 (問題解決のために) ・シリコンの使用量を減らした太陽電池の開発を急いでいる。 <CIS> CuInSe2=化合物半導体 峰元さんが10年間研究しているもの ・薄膜(厚さ2ミクロンで太陽光を吸収) 省材料なので低コスト ・高効率:19.5% ・曲げられる。強度も強い。 <太陽電池バブルの話> ・アメリカではCIS太陽電池で年間1億ドルのお金が動く ・アラブでは太陽電池の開発に100億ドル? ・ドイツの Feed-in-Tariff で投機の対象に Feed-in-Tariff とは、自然エネルギーでつくった電気は国が高く買 い取るという制度 ・ふつうの電気代が少しだけ高くなる(国民全員が負担) ・5年で元が取れるので投機の対象に ・少々太陽電池が高くてもドイツでは太陽電池が売れてしまう。 つまり、Feed-in-Tariff 制度のせいで、コストダウンしようとする 企業努力がいらなくなってきてしまっているかもしれない。 Feed-in-Tariff の項目 ・水力 (Hydropower) ・バイオマス (Biomass) ・地熱 (Geothermal energy) ・陸上風力 (Wind energy)(onshore) ・洋上風力 (Wind energy)(offshore) ・太陽電池 (Solar energy) <今後の電気は地産地消に> ECOネット(Electricity Cluster Oriented) ・・直流配電 電力ルータを街中にたくさん配置し、小さなグループ内で電力を互い に融通し合う方式。ベストエフォート型(電気が足りないときはごめん ・・というスタイル) 現在は、石炭火力発電所などで大規模に発電した電気を電線を使用し 「交流(AC)」で配電し、家庭で「直流(DC)」に変換して使って いる。これは交流の方が放電が少ないため。(送電ロスを抑えられる。 また火力発電所、原子力発電所などで電気をつくる場合、交流の電気の 方がつくりやすいので)現在、日本では送電ロスは5%以下。(これは 優秀な値。また日本の電気は周波数も一定)(余談だが国内の9電力会 社は互いに電気を融通し合って成り立っている) しかし太陽電池は直流なので、それを直流のまま家庭で使える!送電 ロスもないし、送電設備もいらなくなる。 <太陽電池を理解するために> 以下は身近な例 1.電気でモーターを回す 2.モーターから電気を取り出す 上記イメージに下記も似ています。 1.太陽電池:光 → 電気 2.LED:電気 → 光 <現在の大規模電池> ・NAS電池(ナスでんち) ナトリウム・硫黄電池(ナトリウム・いおうでんち) 大規模の電力貯蔵用で昼夜の負荷平準などに用いられる。 <近い将来の電池> キャパシタ 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが 可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な電池と 言われている。現在世界各国で実用化に向けて研究開発中。 とてもためになるすばらしいお話でした。 峰元さん、どうもありがとうございました。 ふじかわ おさむ at 和歌山市 Top Page