<太陽電池>

last update 18.May.2008

(報告)5月17日(土)太陽電池のしくみと太陽電池の有効な活用方
法について

日 時:5月17日(土)13:30〜15:30
場 所:紀の川市北中216番(米市農園)
テーマ:太陽電池
講 師:峰元 高志(立命館大学 理工学部電子光情報工学科 講師)
内 容:太陽電池のしくみと太陽電池の有効な活用方法について

 峰元さんは、現在日産科学振興財団のプログラムで「野菜流通」につ
いての研究もされています。講演後「野菜流通」に関する意見交換会も
行いました。

*

<エネルギーのカタチ>

 1765年 蒸気機関の発明以来、エネルギーは、
1.固体(石炭など)→
2.液体(石油など)→
3.気体(天然ガスなど)→
4.電気

 というようにカタチを変えてきました。
 より遠くへより簡単にエネルギーを送れるようになったのです。

 したがって、電気は「高級エネルギー」なのです。

*

 しかしいいことばかりではありませんでした。
 量産できるようになり、
 大量輸送できるようになり、
 大量消費できるようになりましたが、
 人口の思わぬ増加と
 人類の際限の無い欲望のために
 エネルギー問題は大きくなる一方です。

 深刻なエネルギー不足はもう間近に迫ってきています。


<可採年数>

 あと何年くらい石油や石炭は採れるのでしょう?

 石油:    43年
 天然ガス:  61年
 石炭:   180年
 ウラン235:73年

 上記の数字は30年前から変化がありません。(^^;
 これは採掘技術が上がっているためです。
 また新たな油田も見つかっているからです。
 しかし石油などすべては有限資源ですのでやがてなくなります。

 可採年数のデータは資源エネルギー庁からのデータです。
 常に経済や利権が絡んでいるので、現存する大企業が生き残りやすい
数字(可採年数)に刷りかえられている可能性もあります。


<太陽電池とは>

 結晶のシリコンです。
 つまり太陽電池は半導体からできています。
 p型シリコンとn型シリコン、pn接合という構造になっています。
 太陽から届く「光エネルギー」を電気に変えることができます。


<太陽光発電の利点>

1.無尽蔵(あと数億年は大丈夫)
2.無排出(使用時にはCO2などを排出しないので)
3.無可動(動作する部分はないので)
4.無振動(無可動なので)
5.無騒音(無可動なので)
6.無人化(ヒトが管理する必要がないので)


<設置事例>

 シースルータイプ(see through)の太陽電池の設置場所は下記の通り

・JR金沢駅東広場
・兵庫県県庁舎
・河内長野市清見台コミュニティセンター
・戸田ショッピングセンターなど、多数


<あまりよくない例>

 実は、最初の写真がよくない例です。

 ドイツでは太陽光発電自体が投機の対象になってしまっている。
 ドイツの Feed-in-Tariff の制度でふつうの電気より高く国が買い上
げることになっているので。

 本来は太陽電池の直流を直流のまま使うのがよい。
 各家庭に太陽電池を設置すれば遠くへ送電する必要もなく、送電ロス
もない。


<現在の主流の太陽電池>

・単結晶Si太陽電池
 厚み:200ミクロン(0.2mm)
 効率:17〜21%

・多結晶Si太陽電池(最も普及している)
 厚み:200ミクロン
 効率:15〜17%

・アモルファスSi太陽電池
 厚み:0.5ミクロン
 効率:10〜12%

・シリコンの太陽電池のシェアは92%


<シリコンウェハの製造プロセス>

・珪砂(けいさ)SiO2
(ノルウェー産珪砂は不純物の金属が少ない)

 これをカーボン、アーク炉還元すると

→ 粗製シリコン になる

 これを塩酸と反応させると

→ トリクロロシラン になる

 これを蒸留・精製すると

→ 高純度トリクロロシラン になる

 これを水素還元すると(このとき電気を使用します)

 高純度多結晶シリコン になる

・製造プロセスの中で出てくる副産物(バイプロダクト)はほぼ100
%、再利用されるので、環境汚染はそれほど心配ない。しかし中国の工
場・プラントでは、公害を河川へ垂れ流しているケースもある模様。

・(電気を得るために)太陽電池製作プロセスで電気を使うわけだが、
その電気は3年程度で取り返せるとのこと。


<なぜ太陽光発電が普及しないの?>

1.太陽電池の価格(3kWシステム):200万円
2.電気代で取り返すのに約20年かかる。
 (ちなみに−琉春庵−♪では60年以上かかりそう)
3.太陽電池の寿命:20年以上は使用できるようになった。

(原料不足)
4.なるべく半導体用Siの残り物を使用するようにしている。
5.太陽電池が世界中で売れている!のでSi(シリコン)不足

(問題解決のために)
・シリコンの使用量を減らした太陽電池の開発を急いでいる。


<CIS>

 CuInSe2=化合物半導体
 峰元さんが10年間研究しているもの

・薄膜(厚さ2ミクロンで太陽光を吸収)
 省材料なので低コスト

・高効率:19.5%

・曲げられる。強度も強い。


<太陽電池バブルの話>

・アメリカではCIS太陽電池で年間1億ドルのお金が動く
・アラブでは太陽電池の開発に100億ドル?
・ドイツの Feed-in-Tariff で投機の対象に
 Feed-in-Tariff とは、自然エネルギーでつくった電気は国が高く買
い取るという制度
・ふつうの電気代が少しだけ高くなる(国民全員が負担)
・5年で元が取れるので投機の対象に
・少々太陽電池が高くてもドイツでは太陽電池が売れてしまう。
 つまり、Feed-in-Tariff 制度のせいで、コストダウンしようとする
企業努力がいらなくなってきてしまっているかもしれない。

 Feed-in-Tariff の項目
・水力 (Hydropower)
・バイオマス (Biomass)
・地熱 (Geothermal energy)
・陸上風力 (Wind energy)(onshore)
・洋上風力 (Wind energy)(offshore)
・太陽電池 (Solar energy)


<今後の電気は地産地消に>

 ECOネット(Electricity Cluster Oriented) ・・直流配電
 電力ルータを街中にたくさん配置し、小さなグループ内で電力を互い
に融通し合う方式。ベストエフォート型(電気が足りないときはごめん
・・というスタイル)

 現在は、石炭火力発電所などで大規模に発電した電気を電線を使用し
「交流(AC)」で配電し、家庭で「直流(DC)」に変換して使って
いる。これは交流の方が放電が少ないため。(送電ロスを抑えられる。
また火力発電所、原子力発電所などで電気をつくる場合、交流の電気の
方がつくりやすいので)現在、日本では送電ロスは5%以下。(これは
優秀な値。また日本の電気は周波数も一定)(余談だが国内の9電力会
社は互いに電気を融通し合って成り立っている)

 しかし太陽電池は直流なので、それを直流のまま家庭で使える!送電
ロスもないし、送電設備もいらなくなる。


<太陽電池を理解するために>

 以下は身近な例

1.電気でモーターを回す
2.モーターから電気を取り出す

 上記イメージに下記も似ています。

1.太陽電池:光 → 電気
2.LED:電気 → 光


<現在の大規模電池>

・NAS電池(ナスでんち)

 ナトリウム・硫黄電池(ナトリウム・いおうでんち)
 大規模の電力貯蔵用で昼夜の負荷平準などに用いられる。

<近い将来の電池>

 キャパシタ

 電気を電気のまま(エネルギーの化学反応なしに)充放電することが
可能で、原理的には半永久的に使用することができる、理想的な電池と
言われている。現在世界各国で実用化に向けて研究開発中。

 とてもためになるすばらしいお話でした。
 峰元さん、どうもありがとうございました。

 ふじかわ おさむ  at 和歌山市

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