<発展途上国を危険にさらす電子機器廃棄物>

last update 29.April.2004

http://www.hotwired.co.jp/news/news/20020227203.html

発展途上国を危険にさらす米国の電子機器廃棄物
AP通信
 

2002年2月25日 7:00am PST カリフォルニア州サンノゼ発――中古部品
業者に売却された古いコンピューターが、その後どうなるかご存知だろ
うか?

環境保護団体によると、中古コンピューターは発展途上国のゴミの山に
行き着く可能性が非常に高いという。そのゴミの山では、何千人もの労
働者たちがこうした家電廃棄物を焼却、粉砕、分解して、内部にある貴
重な金属を取り出しているが、その過程で労働者や周りの環境は知らな
いうちに毒物にさらされているという。

25日(米国時間)に公表された報告書『危害の輸出:アジアのハイテク廃
棄物』(Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia)では、「サ
イバー時代の悪夢」の一例として中国南東部の一群の村落を挙げている。
ここでは、米国での元の持ち主のラベルが貼られたままのコンピュータ
ーが、分解されて河原や野原に捨てられているという。

報告書の作成者たちは、この報告が米国の企業や議員を動かして、国内
でのリサイクル活動が盛んになることを望んでいる。

12月に中国のコイユ(Guiyu)という村にあるゴミ集積所を訪れた調査員
たちが目にしたのは、男性も女性も、そして子どもまでもがコンピュー
ターからワイヤを引き出して燃やし、空気を発ガン性物質を含んだ煙で
汚している光景だった。

別の作業員たちは、1日1ドル50セントで雇われ、防護具などほとんど着
けずにプラスチックや回路基盤を燃やしたり、電子部品に酸をかけたり
して、銀や金を取り出している。作業員の中には、鉛が含まれるモニタ
ー用CRTを破壊している者もいると報告書には書かれている。

その結果地下水が汚染され、飲料水はほかから運んでこなければならな
くなっているという。この地域のある川で採取されたサンプルは、世界
保健機関(WHO)のガイドラインで許容されている汚染レベルの190倍の数
値を示した。

報告者の1人で、シアトルを本拠地とする環境保護団体『バーゼル・ア
クション・ネットワーク』(BAN)の一員であるジム・パケット氏は、「
発展途上国での汚い作業はたくさん目にしてきたが、今回衝撃的だった
のは、これらがすべて一般消費者のゴミだということだ」と語った。「
すべて、あなたや私が出したゴミなのだ」

1989年に制定された『バーゼル条約』では、有害物質の国外移送を規制
しているが、米国はこの条約を批准していない。

とくにコンピューター関連の廃棄物は難しい問題になっている。現在、
毎年何百万台、何千万台という機器が「時代遅れ」になって買い換えら
れているからだ。

カリフォルニア州とマサチューセッツ州では、CRTディスプレーの埋め
立てや焼却を禁止している。パソコンメーカーや大手小売店の中にはリ
サイクルプログラムを始めたところもあるが、中古パソコンを引き取る
際、消費者に対して30ドル前後の手数料を要求するうえ、発送処理は消
費者が行なうというものだ。

今回の報告書をまとめたもう1つの団体であるシリコンバレー有害廃棄
物連合のテッド・スミス会長によると、米国では日本や一部のヨーロッ
パ諸国にあるような組織化された家電リサイクル・システムがないため、
家電製品の廃棄物の多くは再販業者や部品ブローカーの手から手へと渡
っていき、その行き先を追跡するのは難しいという。

報告書によると、一部の業界関係者は、リサイクルの名目のもとに収集
された米国の家電廃棄物の50〜80%までもが、実際には国外に移送され
ていると見ているという。

そういった廃棄物は、中国のコイユのゴミの山や、インドやパキスタン
の同様な場所に送られることが多い。労働力が非常に安いため、ネジや
銀を残らず取り出すことがビジネスになるのだ。

スミス会長は、「誰もが、こうした困ったことが行なわれているという
ことを認識しているが、実際に何をすべきかはわからない。事態に目を
向けたくないのだろう」と述べた。

いくつかの環境保護団体は、空きビン回収システム同様、コンピュータ
ーの最初の価格にリサイクル費用を上乗せし、そこからクリーンで効率
的なリサイクルプログラムの資金を調達するべきだと考えている。

こうした計画を考慮している州は数えるほどしかない。その中の1つで
あるカリフォルニア州では先週、2名の州上院議員から、家電廃棄物を
削減するための費用を家電製品価格に上乗せするという法案が出された。

米環境保護局(EPA)の南西地域支部で廃棄物管理を担当するデビッド・
ジョーンズ氏によると、一部の信頼できる家電リサイクル業者や再販業
者はすでに、国外投棄を行なう可能性のある業者に部品が渡らないよう
にする方策を講じてきているという。

「彼らは、誰かに『あなたの扱う物品がどこへ行くかご存知ですか?』
ときかれるのは時間の問題だとわかっているのだ」とジョーンズ氏。
しかし状況が本当に変わるのは、一般の人々から現実的なリサイクルプ
ログラムを求める声が高まるときだけだろうと、ジョーンズ氏は語った。
「この報告書は、人々に疑問を抱かせる効果を持つという点でよいもの
だと思う」とジョーンズ氏は述べた。

[日本語版:天野美保/合原弘子]

日本語版関連記事
・電子機器類リサイクルの一層の強化を
・携帯電話の普及で急増する有害ゴミ
・古いパソコンを捨てないで


Top Page




inserted by FC2 system