<母親の胎内で>

last update 11.June.2002

みなさん、こんにちは。

私たちの宇宙は小さなひと粒の光として誕生しました。

光のしずくは物質のもとになる基本粒子となり、
それらの粒子たちのうずまく霧から
最初の銀河、原始銀河が生まれました。

原始銀河の中で局所的に雲がかたまりはじめ
星が生まれます。

生まれた星はまわりの物を吸い寄せながら、
どんどん重くなり圧縮されていきます。
圧縮されるエネルギーで熱くなります。

燃やすものがなくなると超新星爆発を起こします。

その大爆発のエネルギーで元素が造られます。

私たちの身体をつくっている炭素などの元素の
一つ、ひとつが、少なくとも1回か2回は
灼熱の星をくぐり抜けてきました。

星が燃料を使い果たして、
超新星爆発というかたちで、生を終えたとき、
私たちの生命を造るすべての材料は
宇宙空間にばらまかれ、
それが凝縮して地球となり、人間が誕生しました。

人間は銀河から生まれた星のかけらだったのです。

一方、私たち人間は、母親の胎内でおよそ、
二百数十日あまりを過ごします。

受精後32日目の人間の胎児にはエラの面影が残り、
古代軟骨魚類を思わせるそうです。
いまから4億年前に、陸にいくか海に残るかの
選択をせまられていた頃の面影です。

34日目で、鼻がすぐ口にぬける両生類の顔になります。

36日目には、原始爬虫類として
3億年前に陸にあがった頃の表情になります。

38日目になると、肺で呼吸ができるように、
気管やのどが形成され原始哺乳類の顔つきになって、

40日目にヒトらしい姿になるのだそうです。

地球が1億年かけてやったことを
まさに8日間で母親の胎内で駈け抜けています。
みなさんに魚の頃の記憶がありますか。

生まれた後は脳を発達させます。

進化の頂点と言われている哺乳類は
すべての神経系統を持ち備えています。

脳に着目すると人の場合、
脳幹、大脳辺縁系、大脳新皮質と三層構造になっています。
脳幹は、魚の時代
大脳辺縁系は、爬虫類の時代
大脳新皮質は、哺乳類の時代
とそれぞれの機能を持っています。

脳幹は 生命維持 を、
大脳辺縁系は 感情 を、
大脳新皮質は 知的活動 を
司ると言われています。

例えば、
排泄要求は自律神経系をコントロールする脳幹からの指示です。
赤ちゃんはその場で排泄し、
子どもは授業中ならうろたえ、
大人は会議の最中ならがまんします。

人は大人になるほど、
すべての選択が可能でもあるに関わらず、
大脳新皮質による指示に忠実です。

しかし、大脳新皮質に判断の多くを委ね、
脳幹からの要求を無視しつづけると、
生命は維持できなくなります。

頭より身体の方が賢い
という、最近、聞いた話が印象に残っています。

さて、人間の神経系統は
まだ、計り知れない潜在力を秘めています。

人間として生まれたということは
150億年かけて養われた脳や神経系統の
全体を活用することが使命であるか
のように感じられることがあります。

私たちの中には
けっしてなくなることのない"何か"があって、
物質としてのからだは見えなくなっても
宇宙とともに生きる"何か"は存在しつづけるのかもしれません。

参考:
        佐治晴夫 「宇宙はささやく」 PHP文庫
        佐治晴夫 「宇宙の風に聴く」 カタツムリ社

2002. 6. 7
inserted by FC2 system